~きらっと光る 匠の技~
それはPVC(塩化ビニール)コーティングである。金属を劣化から護ったり、美しく見せるためのコーティング技法。
身の回りにある様々な絶縁部品、配管の留め金具、公園遊具、自転車のハンドルキャップ、各種プラグのキャップに使われている。
多田さんは本学を卒業後、大阪の企業に就職 後に故郷の但馬に帰り生野町で昭和55年「塩化ビニールコーティング加工」会社 タダ工業 を創業
創業当初は量販店向けの洋服ハンガーの加工を主力に行い業績も順調であったが、平成の不況により業績は厳しくなり業態の変更止む無しに至る。社内協議の結果、氏の奥さまの《ひらめき》で園芸鉢植え用支柱の先端のキャップに注目。
蓄積したノウハウを生かし、とりわけ洋欄の支柱キャップの製造を本格的に開始 全国の農園にサンプルを提供又直接出向き懸命な営業を行い、その結果新たな取引先は増え業績は回復。現在日本で洋欄の生産を行っているほとんどの会社と取引がありタダ工業売り上げの50%はこの洋蘭支柱キャップによるものである。
タダ工業で塩ビの加工を行うために使われている機械の多くは多田さんが設計したものであり、中には製品に合わせて自分で作ったものまである。大手通販会社のハンガーや配管の留め具など塩ビ加工をこのオリジナルの機械で行っている。
多田さんの企業理念「小ロット」「短納期」「正確な商品の提供」は近畿経済産業局に「知的資産経営報告書」として掲載、特殊技術やノウハウ、経営理念を公表し新たな事業展開を目指し後継者の長男に託す。
多田さんの自社製品に対する一貫した熱い思いは最終消費者の下に届く時、どのように使われるかを考え より良いもの造り続け信頼を得ることである とのこの信念は創業者から次代へと確実に受け継がれている。
又、多田さんは同窓会においても62E同期の会員により40年前「但馬支部」が結成されてから今日まで常に会の運営に携わっていただき後輩に温かいメッセージを届けていただいています。
寸暇には鋭く世事を捉え短歌や俳句を詠み読者に一服の清涼を醸しています。
❑兵庫県短歌祭入選作の一遍《恋心をうまく口では告げられず薔薇の咲きたる便箋を買う》
❑神戸新聞社賞の俳句《稲田の日ごとざわめく風のこゑ》
など神戸新聞全国版の入選句をはじめ約300句、NHKラジオ入選作(オンエアー2句)は多田さんの嗜みであり為人かと。
加えて昨今の国際社会を憂い筆を執り揮毫《戦争を止めて咲かそう薔薇の花》を某寺の伝道版に掲示
卒寿に入り老境に至るも愛妻と共に山紫水明の地を訪ね自適の暮らしをされている
多田嘉高さんの変わらぬご壮健を祈ります。
桃山学院大学同窓会 但馬支部 支部長74E宮谷正弘
記事編集 石部道宣