近鉄奈良駅で下車してもちいどのセンター街※を突き抜けて高速餅つきで有名な「中谷堂」前で右折南に100m程歩いたところ右側に寛永時代創業約170年の歴史を有する奈良団扇(ならうちわ)の専門店である「池田含香堂」が店舗を構えておられます。お店の六代目当主である池田匡志さん(09B)をここにご紹介させていただきます。
※「もちいどの」の地名は「餅飯殿」。 この名前の由来は奈良時代に東大寺の高僧とともに、 この土地の若者が餅と飯を携えてみごと大峰山の大蛇退治に成功したという伝説に由来し ている。
先代のお父様(5代目)を早く(小学2年時)に亡くされ、池田さんは次男さんでしたが大学卒業後22歳で6代目当主を継承されました。先代亡き後は先々代の祖父(4代目)、叔父様やお母様の助けを借りながら奈良団扇の製作技術の取得に色々と苦労されたそうです。というのも「奈良団扇」は1000年以上の歴史を持つ奈良県の指定伝統工芸品であり今では唯一「池田含香堂」が家内工業にて製作販売を続けられているという事情が有ったからです。
奈良団扇の製作工程は素材の竹と和紙の生産を除き13程の工程が有り、製作工程で使用される工具なども全て家内生産(手作り)をされています。奈良団扇の一番の特徴は団扇の表裏に貼られている和紙の模様は色鮮やかで正倉院の宝物や奈良の風景等奈良らしい模様が印刷や手描きではなくすべて透かし彫りされているところです。団扇10本分(20枚)をまとめて作業をされる様ですが手頃な団扇(上の画像)の彫りの時間は3~4時間、手の込んだものだと3週間ぐらいかかるそうです。そして他の団扇には無い団扇面のしなり(柔らかさ=風が大きい)と軽量感が特徴です。池田さんは先代・先々代の域を目指して日夜技術の向上に取り組んでおられ古来の形状や模様を引き継ぎながら新たな挑戦も考えられているようでした。
お話は大学時代に戻りますが、池田さんは高校生の時に家業を継ぐ事を決めておられ大学進学は考えておられなかったそうですが、お母様から「社交性を身につけたほうが良い」と勧められ桃大に入学されました。元々は野球少年でしたが高校でケガをして野球を諦め、その後ギターに触れ更にはバンド活動もされていたので、大学では軽音楽部に所属して副部長もされていたようです。大学時代に出会った友人や経験で培った社交性やコミュニケーション力の確かさは筆者がインタビューをさせていただきながら実感した次第で有ります。
現在はメディアへの出演をはじめ、全国の工芸イベントや小学校での講演など色々な活動を通じての奈良団扇の魅力の発信に取り組んでおられるとのことですが、団扇の製作を一手に引き受ける6代目当主としては猫の手も借りたいほどのお忙しさだと感じました。新型コロナ禍では仕事が激減し、仕事がしたい/仕事が欲しいと感じる中で「自分は奈良扇作りが好きなのだ、自分には奈良団扇作りが一番だと再認識をされ、じっくりとこれからの団扇作りを考える良い機会になった」と振り返っておられました。
最後に桃山学院大学の学生さんへの一言をお願いしましたところ、趣味でも仕事でも良いから早く自分がやりたい事(目標)を見つけ(定め)、それに向かって全力で真正面から向かって進めば必ず道が開けるし失敗してもそこから新たな道が開けると思いますとの事でした。
奈良を訪れた時には是非「池田含香堂」に立ち寄り「奈良団扇(ならうちわ)」をお土産としてお買い求めください。私は上で紹介した赤い団扇を買い求めました。予約は必要ですが「奈良団扇作り体験」も実施されておりますのでお楽しみください。
詳しくはこちらから → https://narauchiwa.com
推薦者 奈良支部長代行(同窓会副会長)
粟田 隆三郎(68E)